裏紙に書くようなこと

文章を書く練習

ファンクの歴史(上): ファンク誕生編 を読んだ話

僕はこれまで、吹奏楽やコンポジャズ 、ビッグバンドなどでサックスを吹いてきている。その中でファンクを演奏する機会も多い。ファンクと言えばタイトなリズムとかっこいいメロディーの曲のイメージを持っていて、代表的なミュージシャンと言えばジェームズ・ブラウンメイシオ・パーカーを思い浮かべる。その程度の知識の僕だが、この本を読んでファンクの歴史や流れを追うことができた。

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まずは上巻を読了。ファンクの歴史というタイトルだが、その内容のほとんどはジェームズ・ブラウンの歴史だ。ファンクは1940年代のブラックミュージックであるジャズやロックンロールの流れの中から発生し、グルーブを追求した結果リズムが進化していき、16ビートが誕生する。その進化はジェームズ・ブラウンのバンドにより成し遂げられていく様子が書かれている。黒人のアイデンティティとも言える跳ねたリズムと、そこから脱却するイーブンのリズムを行ったり来たりするような進化の過程が、とてもわかりやすく書かれている。また、ジェームズ・ブラウンが全パートに打楽器のような強烈なリズムを求めたため、メイシオ・パーカーらホーンセクションのソリストも、メロディックでなくリズミックなソロを取るようになったということで、ファンク特有のタイトなホーンセクションの成り立ちもよくわかった。

また、本の中で「JBファンク進行」と呼ばれている、ひたすら同じコードを繰り返すコード進行も、ジェームズ・ブラウンの発明だそうである。同じビート、同じコードをひたすら繰り返してグルーブさせていく曲は聴くのも演奏するのも楽しい。僕の場合は途中でバテてしまったり、フレーズがネタ切れして、全く上がらない演奏になるなんてこともよくあるのだが。

ファンクの背景にはブラックミュージックがあり、さらに時代背景としてキング牧師が暗殺され、ジェームズ・ブラウンの曲が公民権運動で歌われたりと、ジェームズ・ブラウンやファンクが黒人の象徴のような位置づけになるそうである。そしてその流れは、今年大きな運動となったBlack Lives Matterに繋がっていく。ファンクが生み出したリズムや音楽は白人層など世界的に広がっていくが、やはり根底にはブラックミュージックが脈々と流れているのだろう。

Black Lives Matterについて、僕は黒人も白人も、誰もが安心して暮らせる世の中になってほしいし、黒人差別は絶対にしてはいけないと思っている。ただ、声を大にして言及するつもりはない。なぜなら、僕の大好きなブラックミュージックも含めて、そこには深い歴史があり、それを理解していない僕が易々と「黒人の命も大切だ」などと言えないからだ。肌の色だけではない、住む場所も文化も違うはずだった人間が、突然使う者使われる者の立場になり、その後長い間格差が残り、さらには命を奪われても、方や重罪、方や無罪なんてことが今でも起こっている。平和ボケしている僕が、そこを軽々しく口に出すことはできない。ただ、声を大にするつもりはないが、少なくとも自分の子供には、僕の思いを伝えたいとと思っている。

上巻だけでも様々な発見があり、たくさんのことを考えさせてくれる本であったけれど、その本質はファンクの誕生から進化の過程を学び、ファンクという音楽を理解させてくれたことだと思う。文だけでどのような音楽か想像できるほどの文章も素晴らしい。宇宙人という立場で書かれている設定が少しウザいが、それもまた良しだと思う。